東京都美術館と「ボストン美術館の至宝」展【2/6】とがったオブジェは端、場所により違うタイルの貼り方

[第315回] 東京圏の美術館・博物館(11)‐2
   東京都美術館は、よくできていると、いつ来ても感心する。
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南側から中庭部分に入ると、中央に↑のオブジェがあるのだが、人が通る脇に配置されているということで、人がぶつかっても怪我しないような球形のものが配置されている。
  屋外のオブジェはこれだけではなく、西側の南北に長い棟の東側にもある。↓
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↑ こちらは、角ばったものだが、これは人が通る場所ではない所に配置されており、東京都美術館ではそのあたりの配慮がある。[第311回]《国立西洋美術館 常設展とル・コルビュジェの芸術空間展【6/6】西美にルーツが?と思える前川國男の建築》http://tetsukenrumba.at.webry.info/201708/article_6.html でも写真入りで述べたが、「世界の磯崎」の設計による「ポストモダンの集大成」と言われ二級建築士のテキストにも登場する「つくばセンタービル」では、子供の眼や顔の高さあたりに突き出た金属製のオブジェがあったり、人がつま先をひっかけて転倒する可能性が考えられる溝をわざと作ったりといったことがなされていたが、東京都美術館ではそのようなものは一切ない。美術館として使えるように使いやすいようにということが、まず、前提として考えられて作られているという点において、当たり前といえば当たり前のようだが、つくばセンタービルなんかとは全然ちがう。
   これらのオブジェの配置とかは、前川國男が設計した時からのものなのか、建物が完成してから設置されたものなのか。 後に配置されたものなら、前川國男の「お弟子さん」が考えたものなのか、東京都美術館の運営者の誰かが考えたものなのか、どちらにしても、よく考えて配置されています。しつこいようですが、つくばセンタービルなんかとは全然違います。

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↑ 今回、気づいたのですが、エンジ系と黒系のタイルを入り交ぜて貼った外壁と床面は、東京都美術館や熊本県立美術館の特徴で、前川國男はこれが好きなようですが、そのタイルの貼り方は、どこも同じということではなく、場所によって貼り方も違えば、タイルの大きさも微妙に違ったりするようです。 ↑は、東京都美術館の「地下1階」部分に降りた所、西から東を見た写真ですが、違いますでしょ。

   東京都美術館の場合、場所が上野公園の内部で高さに制限があるため、地下1階の部分に展示スペースが設けられているというのですが、しかし、その「地下1階」の部分の中央に中庭をとって、そこから光を入れているため、「地下1階」といっても暗いイメージはなく、「地下1階」のロビーにいると、「地下1階」というよりも、そこが「1階」という印象を受けます。↓
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↑ 内部の柱も円柱になっているというのは、これは、デザインの上からだけでなく、混雑した時に、人がぶつかっても怪我しにくいようにという配慮でしょうか。

   企画展の問題として、「混む」ということがある。 「混む」からその分だけ見にくい。疲れる・・・というのは企画展ではしかたがないと思っていたのですが、今回、入口でストップをかけられて、ただ今、「10分待ち」という状態でした。↓ 実際には10分も待ちませんでしたが、これまでも、東京都美術館の企画展には何度も着ましたが、入口で止められる経験は、それも土日・祝日ではなく平日に止められたというのは初めてです。↓
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↑ 奥の方で、おじさんが「10分」と書かれた札をかかげています。最大で10分ほど、入口で待ってもらいますという意味のようです。

   壁や床のタイルですが、何気なしに通り過ぎていると見過ごすのですが、よく見ると、その場所によって、貼り方が違うこともあり、そして、大きさも場所によって違います。↓
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↑ 「地下1階」の企画展会場への入口付近の床です。

   東京文化会館にしても、よく考えて作ってあるなあと思うものの、やっぱり、1961年に完成した建物だけあって、その時代においてはよく考えて作られた建物であっても、上の方の客席に行くのにエレベーターもエスカレーターもないなど今現在の基準から考えると物足らない部分もあります。 東京都美術館は、《ウィキペディア-東京都美術館》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8 によると、最初にここに東京府美術館が建てられたのは、1926年、「ひどく不合理(1925年)な治安維持法制定」の翌年ですが、前川國男設計の今の建物は1975年の完成らしい。 東京文化会館よりは14年後で建てられた建物ですが、それでも、現在の基準からすると物足らない部分も出てきたようで、屋外で1階から「地下1階」の中庭に至る部分は、かつては階段で降りるしかなかったと思ったのですが、今は屋外用のエスカレーターがとりつけられ、エレベーターも設置されています。↓
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( ↑ 黒い箱状のものが、エレベーターの1階部分。)
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( ↑ 1階から階段を経て、北側の棟を見る。 階段の左側にエスカレーターが設置されている。右側の黒い建物がエレベータ―の建屋。 )

※ 《ウィキペディア-東京文化会館》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E6%96%87%E5%8C%96%E4%BC%9A%E9%A4%A8 
《ウィキペディア-東京都美術館》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8 
   何年か前に、東京都美術館は改築工事をおこなっていたと思ったのですが、おそらく、その時に、屋外用のエスカレーターとエレベーターが設置されたのではないかと思います。  熊本県立美術館も、『前川國男のディテール―熊本県立美術館をとおして』(彰国社)の図面を見ると、見当たらないエレベーターと、南側と北側の2階部分をつなぐ渡り廊下というのでしょうかが今は設置されており、実際に使用した後、時代とともに要求されるものに応えようという対応だと思います。
   熊本県立美術館のエレベーターは既存の建物の外側に接してエレベーターを設置して屋内から乗り降りできるようにというものですが、東京都美術館に設置されたエレベーターは、屋外の1階と「地下1階」を結ぶものです。 デザインとしては、前川國男が設計した完成時の外観デザインを損なわないように、北側の東西に長い棟と同じ黒系の色彩を使用したものになっていますが、しかし、エレベーターがあった方が特に歩行に困難な人にはいいとは思うのですが、初期の外観デザインを損なわないように配慮したデザインではあるけれども、しかし、それでも、もともとは、この位置は何もなく、コの字型に囲まれた空間だったところにぽっこりとエレベーターの建屋ができたのはデザインの上では、やっぱり、マイナスかなという印象は受けました。 北側の棟に合わせた黒系のデザインにしたようですが、むしろ、透明感があるスケルトン仕様にした方がまだよかったということはないのだろうか、もしくは、パリのルーブル美術館の前のガラスのピラミッドのように、そこに建築物を設置するのなら、既存の建物と同じデザインのものを設置して合わせようとするのではなく、むしろ、そこにひとつのオブジェともいうべきものをエレベーター建屋に作った方が逆に調和したということはないか、熊本県立美術館のエレベーターの屋外外観は既存のものに合わせることで浮きだたないように作られたが、ここは、むしろ、ルーブル美術館前のガラスのピラミッドのようにした方がよかったということはないか・・・・などと考えたりもしました。

   東京都美術館というと「エンジ系のタイル貼りの外壁」というイメージが強いのですが、よくよく見ると、「エンジ系のタイル貼りの外壁」の建物は、西側の公募展棟と東側の企画展棟であって、北側に東西に長い建物についてはタイル貼りではなく、又、エンジ系ではなく黒系の色彩の建物です。 この東京都美術館の建物、何度か来ると、「あ、ここはこうなっていたんだ」と前に気づかなかった所に気づくというものがけっこうあります。 何気なしに通り過ぎると気づかないが、実はけっこう凝っていたりというものが相当あります。
   北側の東西に長い棟にしても、よく見ると、「地下1階」部分と1階・2階ではデザインが違います。
   美術館は美術展示物が主役であって建物はあまり出しゃばり過ぎてはいけないと同時に、だからといって手を抜くわけではなく、よくよく見ると、「こんなになってたんだあ~あ」と感心する・・・という、前川國男の設計の建物にはそういうものが多いと思うのですが、東京都美術館は特にそれを感じます。
  前川國男の設計の建物でも、東大本郷キャンパスの三四郎池と御殿下グランドの間にある山上会館は、これは、前川國男の晩年の作品であり、東側は御殿下グランド、西側は三四郎池という立地で、三四郎池の景観を壊さないように配慮されています。又、ウィンブルドンのテニス大会では、観客席も観客もテニスコートでプレーする選手が目障りになるような色合いのものを着ないよう求められているとかいいますが、山上会館もまた、東側の御殿下グランドで球技をおこなう人にとって目障りにならないように奇抜な色合いや奇抜なデザインのものは避けるという配慮がなされた建物であり、そして、この東京都美術館の北側の棟で「地下1階」と1階・2階をよく見ると、外観デザインと配色が異なるように、山上会館も1階・2階・3階の外観デザインが微妙に異なってできている点など、よく考えて設計されていると思ったのですが、しかし、東京都美術館や熊本県立美術館などと違って、晩年の作品だという先入観があるからかとも思ったのですが、「幾分、元気がない」ような気がしてしまったところがあります。「気のせい」かなとも思ったのですが、前川國男の設計の建物はいい建物だなあと思うものが多いのですが、山上会館については、「またか」というもの、新しいものを生み出すのではなく、これまでにやってきたものの繰り返しでしかないものがあり、やはり、年齢的に元気さがなくなってきていたというようなところはなかったか・・・などと思ったりもしました。
※ 《ウィキペディア―前川國男》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E5%B7%9D%E5%9C%8B%E7%94%B7

   次回、なぜルノワールか。発掘して自国に持ち帰る是非。http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_3.html

  (2017.10.14.)

☆ 東京都美術館と「ボストン美術館の至宝展」
1. ゴッホと佐伯祐三の「郵便配達夫」http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_1.html
2. とがったオブジェは端 〔今回〕
3. なぜルノワールか。発掘して自国に持ち帰る是非。http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_3.html
4. 東面のプランター http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_4.html
5. 北口・博物館動物園駅・池田家黒門・自由な女神http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_5.html
6. 通用門・事務棟・西面・公募展棟南面・椅子の背が窓から見える窓http://tetsukenrumba.at.webry.info/201710/article_6.html


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